翠雨の向こう
右手の傷が疼いた
零しても 癒えることなどなく
黒い 黒い 雨が 降りかかる
声を発しようとするとき
手は自然と喉元に伸びて
生まれる言葉の命をもぎ取る
首絞めたいんじゃないんだよ
これでも
何かが誰かのためになったらなって
思って描いて唄ってきたんだよ
誰も 知らない 物語 幕を閉じたまま
聞いてくれなくていいよ
そんな人 元々いなかった
平気 平気 雨は 気にしない
声を発しようとするとき
目は自然と誰かを見ていて
生まれる言葉の命をもぎ取る
気にしたいわけじゃないんだよ
これでも
何かが誰かのためになったらなって
曖昧に純粋に思ってきたんだよ
誰も 知らない 物語 幕を閉じたまま
くすんだ眼に映る
色のない 光と影さえも
揺れて 揺れて 雨に 命乞い
右手の傷が疼いた
零しても 癒えることなどなく
黒い 黒い 雨が 降りかかる
誰も 知らない 物語 幕を閉じたまま
2011/05/07