骨
Concept
中原中也さんの詩『骨』に絵を添えるというものでした。
一つのメルヘン同様、詩集を想定した課題だったので、本のノド(真ん中)に文字が来ないようにしました。
これ……ちょっと難しい詩ですよね…。私もかなり考えました。
肉は、自分の内面を隠し、自分を傷つけようとするものを寄せ付けないための姿で、
骨は、自分の刺々しい性格が際立てられた他人から見た自分の姿で。
死んだことによって肉は機能しなくなり、骨だけが自分の特徴として定着してしまう。
本当に見てほしかった姿は、霊魂なのに……そんな霊魂の視点を描きました。
以下、読み辛い方のために詩です。
骨
ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ
ヌックと出た、骨の尖。
それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。
生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある、
みつばのおしたしを食つたこともある、
と思へばなんとも可笑しい。
ホラホラ、これが僕の骨――
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?
故郷の小川のへりに、
半ばは枯れた草に立つて
見てゐるのは、――僕?
恰度立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがつてゐる。
SIZE:A5・2p
USE:Photoshop